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皆さんは「レジオネラ菌」という言葉を聞いたことがありますか?
日常生活の中で意識することは少ないかもしれませんが、実はこの菌、私たちの身近な場所に潜んでいて、重篤な健康被害を引き起こす可能性があるのです。特に高齢者や免疫力の低下した方にとっては、命に関わることもあるため、正しい知識を持って予防することが非常に重要です。
今回は、レジオネラ菌の特徴から感染経路、発症時の症状、予防策までを詳しく解説いたします。
レジオネラ菌とは?
レジオネラ菌(Legionella)は、自然界の淡水や土壌に生息している細菌の一種です。特に人が管理する水回り、たとえば冷却塔、温泉施設、加湿器、シャワーヘッド、給湯器、浴槽などで繁殖しやすい性質を持っています。25℃〜50℃程度のぬるま湯の環境を好み、栄養源として水に含まれる有機物や微生物を利用して増殖します。
どうやって感染するのか?
レジオネラ菌は、一般的には人から人への感染は起こりません。主な感染経路は「空気中に舞った菌を吸い込むこと」です。たとえば、以下のようなケースが危険です。
●汚染された温泉や浴槽のお湯のミストを吸い込んだとき
●加湿器やシャワーなどから発生したエアロゾル(微細な水の粒)を吸引したとき
●冷却塔など大規模施設の空調設備が汚染されていたとき
つまり、「水を飲む」ことで感染するのではなく、「菌を含んだ水の霧を吸う」ことで肺に菌が入り、感染が成立します。
レジオネラ症の種類と症状
レジオネラ菌による感染症は「レジオネラ症」と呼ばれ、主に以下の2つのタイプがあります。
① レジオネラ肺炎(重症型)
一般的な肺炎とよく似た症状を示しますが、進行が早く、命に関わるケースもあります。
主な症状:
- 高熱(39℃以上)
- 咳、息切れ
- 胸の痛み
- 頭痛や筋肉痛
- 下痢や嘔吐などの消化器症状
- 意識障害(高齢者や重症例)
特に高齢者、慢性疾患のある人、免疫力が低下している人(がん治療中、糖尿病、臓器移植後など)は重篤化しやすいため注意が必要です
② ポンティアック熱(軽症型)
こちらはインフルエンザのような症状を呈し、肺炎には至らず、自然に回復することが多いです。
主な症状:
- 軽度の発熱
- 筋肉痛
- 倦怠感
- 頭痛
発症後2〜5日程度で回復するケースが多く、特別な治療を必要としない場合もあります。
実際にあった感染事例
過去には、日本国内でも温泉施設や入浴施設でのレジオネラ感染が報告されています。たとえば、ろ過装置や浴槽の清掃を怠っていたことで菌が増殖し、大規模な集団感染につながったケースもあります。また、2020年には都内の高齢者施設で加湿器の内部にレジオネラ菌が繁殖し、入居者が肺炎を発症するという事例も発生しました。こうした事例からもわかるように、施設側の衛生管理の不備が原因となるケースが多く、定期的な点検・清掃が求められます。
どうやって予防すればいいのか?
レジオネラ菌の予防には、日常的な「水回りの衛生管理」がカギとなります。以下のような対策を心がけましょう。
浴槽・風呂の管理
・毎日お湯を抜き、浴槽を洗浄・消毒する
・長時間お湯を溜めっぱなしにしない
・循環式浴槽(追い焚き機能)を定期的に洗浄する
加湿器や空調設備の管理
・加湿器の水は毎日交換し、タンクを清掃する
・フィルターや噴霧口も定期的に取り替える
・エアコンや冷却塔の点検・清掃を行う(施設管理者向け)
シャワー・給湯器の管理
・長期間使用していない場合は、しばらく水を流してから使う
・定期的にシャワーヘッドを外して洗浄する
まとめ
レジオネラ菌は、特別な場所だけでなく、私たちの身近な水回りにも潜む可能性のある菌です。特に免疫力が低下している人や高齢者は感染しやすく、重症化するリスクも高いため、家庭でも注意が必要です。
「清潔に保つ」「定期的に洗う」「水を溜めっぱなしにしない」
こうしたシンプルな習慣の積み重ねが、レジオネラ菌の繁殖を防ぎ、安心・安全な生活環境を守ることにつながります。
もし普段から公共浴場や温泉、加湿器を使う機会が多いという方は、ぜひ一度ご自宅や利用施設の衛生状態を見直してみてください。